[124]K'SARS
1番星に願い事をすると願いが叶うと言われている。 さて今回は、誰がお願いをするのかな? 今日はミカの誕生日。 いつもと同じように、他のみんなが家でパーティの準備をして、僕がデートをするというパターンになっている。 でも、今回はちょっと違う。 みんなのときとは違い、僕自身がミカを誘って、実家のほう一泊する予定。 今僕たちは、下りの電車で向かっている最中。 「ねえ、ご主、じゃなくて、ダーリン」 「なんだい?」 今回はミカだけだから、前のときみたいにマスコットになっていない。 「どうしてミカだけ、ダーリンの実家に行くの?」 「今は内緒だよ。楽しみに待っててよ」 「…まあいいけどね。だって、ダーリンとこうして2人っきりで旅行が出来るんだからね」 ミカは人目を気にしないで、僕の腕に絡んでくる。 すると、どうしても当たっちゃうんだよね、ボリュームがあるのがさ。 本能では素直に嬉しいんだけど、理性を保つのがしんどい。 うう、自制心自制心。 「ところでダーリン」 「うん?」 「あの鞄の中には何が入っているの?」 ミカは隣りに置いてあった僕の鞄に注目する。 「鞄がどうかした?」 「なんか日帰りにしては多くない?」 「父さんたちのお土産が入っているんだよ。手ぶらで帰るのもなんだと思ってね」 というのは建前で、中にはもっと重要な物が入っている。 今は内緒だけど、いずれ出すつもり。 僕の中に秘めている決意とともに。
「うわ〜、久しぶり〜」 「そうだね。まだウサギだったころのミカと一緒に来たとき以来だもんね」 地元についた僕とミカは、そのまま実家に行かずに、先に昔の思い出の地へと向かった。 休みの日によく遊んだ裏山。 父さんにあの歌を教えてもらった場所であり、ミカとよく遊んだ場所でもある。 「前に来たときにはゆっくりできなかったけど、今回は1泊できるからご主人様とのんびりできるね」 「喜んでくれて何よりだよ」 はしゃいでいるミカを見て、僕は自然と笑顔になる。 いつからだろうな、こんな風になったの。 始めの頃は、ミカの積極的な行動にただ戸惑うばかりだけど、今となってはそれが心地よくなっていた。 本当はそこまでで止まっていればよかったんだけど、日々募って行く思いを抑える事が出来なかった。 そして今日、僕はここで人生で最大の転機を迎えることを選んだ。 「…ねえ、ミカ」 なるべく気持ちを抑えながら、僕はゆっくりと鞄の中からあるものを出す。 「なあに? ご主人様」 「あのさ、ミカに誕生日プレゼントを用意したんだけど、受け取ってくれるかな?」 「ここで?」 「そう、ここで」 「…うん。いいよ」 「じゃあ、目をつぶっててくれる?」 「いいわよ」 ミカが目を閉じたのを確認して、僕はプレゼントを手にして、ゆっくりとミカに近づく。 「ねえ、まだなの? ご主人様」 「もうちょっとだよ」 箱に入っているプレゼントを取り出して、そっとミカの薬指に通す。 「もういいよ。目を開けても」 「……!! これ…」 自分の薬指にある物を見て、ミカは驚きを隠せないようだった。 きっと、僕がミカの立場でも同じリアクションをとるだろうな。 「本物はまだまだ買えないけど、とりあえず、今はそれで我慢して」 「…ミカで、いいの?」 まだ驚いている状態で、ミカは僕の気持ちを聞こうとしていた。 「ミカだからあげるんだよ。一生かけて一緒にいたい、ミカだからこそ」 守護天使なんて関係無く、1人の大切な女の子として守って行きたいから。 そういったらミカは、口を手で抑えて泣いた。 「…すごく、嬉しいよ。ご主人様」 「…しておいて、何だけど。受け取ってくれるかな?」 この言葉にミカは、 ちゅ。 言葉の代わりに、不意打ちにくらったキスで答えてくれた。 「ミカからの気持ちだよ。ご主人様。ううん、本当の意味での、ダーリン」 「…ありがとう。そうだ、これも受け取ってほしいんだ」 「まだ何か、ミカを驚かせるものがあるの?」 「そんなところだよ」 僕は鞄の中から、もう1つの切り札を出す。 「…ヴェール?」 「うん。一式はさすがに用意できなかったから、今はこれだけ」 「もう、ダーリンたら。気が早いんだから」 「ごめん」 「ううん。ミカはとっても嬉しいよ。ねえ、してくれる?」 「もちろん」 ミカの頭にヴェールをかぶせると、僕はその綺麗さに動けなくなる。 「…綺麗?」 「うん。とっても、綺麗だよ。ドレスがないのが、ちょっと残念だけど」 「…ドレスなら、あるよ」 「えっ?」 今まで聞いたことがない、ミカのすごく色っぽい言葉に僕は少し驚く。 「ミカとダーリンにしか見えない、心の中でのウェディングドレスが、ちゃんとここにあるよ。そして、タキシードも」 「…そうだね」 「ところで、神父さんはいないの?」 「今日は、ね。本番はまだまだ先になるよ。もちろん、そのときまでにちゃんと一式を着せられるように、僕もがんばるから」 「うん。期待して待ってるか・ら・ね。ダーリン」 僕たちはもう1度見詰め合って、そっと口付けを交わす。 気がつけば、もう空には星が見えていた。 「あっ、1番星み〜つけた。そうだ、せっかくだから、お願い事しちゃおうっと」 「僕もしようかな」 ミカに続いて、僕も願い事をする。 これからもずっと、ミカやみんなと一緒にいられますようにっと。 うん、これでよし。 「…ふう」 「ミカは、何をお願いしたの?」 終わった頃を見計らって、僕はミカに話しかける。 「うふふ、な・い・しょ」 「なんだよ、それ」 「あはは、多分、ダーリンと同じことだよ」 「そっか」 「そうだよ」 「…行こうか」 「はい」 僕はミカの手を取って、ゆっくりと実家に向けて歩き出す。 両親に、最愛の人を紹介するために。
1番星に願い事をすると願いが叶うと言われている。 次回は、誰がお願いをするのかな?
<終>
後書き♪
ふう、なんとかセーフ。 「あと数分でしたね」 まあな。 2回目のBSSだったけど、今回はスムーズに出来たからな。 「それにしてもこの後書き、今までと同じなんですね」 まあ、これも連載だからね。 別々にしないとさ、色々と混乱を招くからね。 「なんか、ここでのご主人様とあっちのご主人様が違いますよ」 …あっちは、なんか変なことに発展しているから、せめてこっちだけは普通にしないとさ、わけわからなくなるからさ。 「ヒカリちゃんは、どうします?」 まあ、機会があったら出そうかなと。 「早く出してあげないと、またぢゃむを持ってきますよ」 …そうだな、出してあげないと、また変な展開になりかねないからな。 「変な展開にしているのは、ご主人様ですよ」 …では、今回はこの辺で〜。 「うう、何も変わっていないじゃないですか!!」 ミカ、誕生日おめでとさんー!!
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2003年09月24日 (水) 15時42分
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